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29年度ルネ鑑賞モニターレポート⑫「小山実稚恵ピアノ・リサイタル」

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2/3(土)小山実稚恵ピアノ・リサイタルに寄せられたルネ鑑賞モニターレポートを抜粋でご紹介します。

 

はだれ雪の残る土曜の午後、小山実稚恵ピアノ・リサイタルを鑑賞し、とても幸せな気持ちになりました。チャイコフスキー国際コンクール、ショパン国際コンクールの2大コンクールに入賞された日本を代表するピアニストという事は知っていたのですが、初めてリサイタルを堪能させていただき、帰りしなには「小山実稚恵ショパン名曲集」のCDと「点と魂と」の著書をもとめて、ファンのひとりに連なった次第です。
3時開演。会場は満席状態の盛況ぶりでした。光沢のあるダークワインのロングドレスで颯爽と登場。すぐに、シューマンのアラベスク ハ長調が奏でられました。「点と魂と」(小山実稚恵著)によると、ハ長調のまっさらな調性はものごとの始まりという意味で、公演の一番に組み入れることが多いようでした。
ブラームスの小品が続いたあと、ベートーヴェンのソナタ第31番変イ長調作品110。第1楽章、第2楽章、第3楽章それぞれの曲想が味わい豊かに表現され、最後のフーガで盛り上がって20分の休憩になりました。ただ、惜しいかな、季節柄咳をする人が多かったのが残念でした。せめて、マスクをしてほしかったです。インフルエンザの流行も考えると売店でマスクも販売してほしいとさえ思いました。
後半は期待のショパンのノクターンとワルツ。期待どうりの素敵な演奏でした。「小犬のワルツ」以外にも何曲かは馴染みの曲が入っていました。 音楽の素人ですが、優しい曲も精悍な曲も、どの曲も芯をとらえたきちんとした音色に感じました。聞いていて、心地よいのです。最後「華麗なる大円舞曲」は舞踏会の荘厳さを見事に表現していると思いました。
アンコールは3曲。ラスト・ナンバーが印象的でした。
ロシアの作曲家スクリャービンの「2つの左手のための小品」。スクリャービンはピアノを弾きすぎて右手を痛めた時、左手だけでも練習をし続け、その時これを作曲したそうです。右手は膝の上に置いたまま、左手だけで演奏するのです。目を閉じて聞いていると、片手だけとは考えられないほどにダイナミックに迫ってくるのです。初めての体験でした。いつも、両手でバランスをとりながら弾くであろうに、とても難しいと思います。右手を動かさないという強い意志が働いていることが見てとれました。案の定、「ブラボー」の嵐で終わりました。
小山実稚恵さんのお人柄は、入ってこられる時、ご挨拶の仕方、曲と曲との間の呼吸の取り方、アンコールをする時の照れたような仕草、アンコール曲を自ら観客に向かって伝える飾らない様子。一つ一つにお人柄が滲みでていて。そのお人柄もメロディーになって響いていたのだと思いました。
コンサート会場で販売されるCDや関連グッズを見るのは楽しみの一つです。それらを通して、そのピアニストだったり演目だったりをより深くより幅広く知るきっかけとなるもの。感動の余韻を自宅に持ち帰り、その感動に二度、三度と浸ることができるのですから。サインの列は長蛇でした。
今回、出会った著書の「点と魂と」は、12人の幅広い分野の達人との対談を集約したもので、興味深いものでした。そして、その方たちのイメージで音楽家に例えている所が愉快でした:野村萬斎なら20世紀フランスの偉大な作曲家メシアン;羽生善治ならモーツァルト;熊川哲也ならリスト;宇宙飛行士の山崎直子ならバッハ。
今、リビングでショパンのワルツを聴き、お茶をすすり、その本を読みながら小山実稚恵の世界を、可愛らしいお茶目な一面も含めて再度味わっているところです。
(50代女性モニター、1階席中央で鑑賞)

 

静かにピアノに向きあって、そっと弾き始める姿。小山実稚恵さんのピアノの音は、そこにある空気をつかまえて、その空気の粒に音をのせていくようだと感じました。空気を押しのけて、切り開いて音楽を押し込むのではなく、そっとそっと置いていく感じ。幅のある音と、低い音が震えながら響く様子は、格式高いフランス料理を味わうようだと思いました。
演奏は、シューマン、そしてブラームスからスタートしました。ステージ上で深々とお辞儀をする小山さんの姿にも相まって、とても奥ゆかしく聴こえた演奏は、ベートーヴェンのソナタ31番の演奏から一転。ピアノの一つ一つの音ではなく、ベートーヴェンの音楽の世界がわーと浮かび出し、湧きあがってくるようでした。
後半は、演奏に加えて、プログラムの面白さも際立ちました。ショパンのノクターンが連続で4曲、その後にワルツが6曲続く構成で、一曲一曲が拍手で区切られることなく、交響曲の楽章のように演奏されました。繋げて演奏されることで、ショパンの人生の流れや、転機、生きている中で味わった感情の機微のようなものが、表現され、伝わってくるように感じました。何の説明も予備知識もない中でそんな風に感じるのはとても不思議でした。実際、解釈は全然違うのかもしれませんが、どうであっても、演奏は本当に素晴らしかったです。
ルネこだいらの公演を通して、ボリスベレゾフスキーさん、若林顕さん、昨年の横山幸雄さん・・・そして今回の小山実稚恵さんと、いろいろなピアニストの演奏を聴きましたが、ピアノの音とは弾く人によってこんなにも音色が違うのかと改めて思いました。
その日のコンディションや会場の空気によっても演奏は変わることがあるのかもしれません。また別の機会にも小山さんのピアノの音を聴いてみたいと思いました。
(40代女性モニター、1階席後方で鑑賞)

 

「包み込むような演奏だな」そして「包み込むような空気をもった人だな」
これが小山さんの本公演を鑑賞した率直な感想でした。
鑑賞モニターのプログラムの中で、いくつかの楽器演奏や音楽コンサートを鑑賞させて頂きました。
毎回、音楽性も方向性もそれぞれ大きく異なっていましが、私が一番、毎回違うと感じていたのは「空気感」でした。
緊迫した空気を纏った演奏者や観客ごともっていくような雰囲気の方、物語の1シーンを思わせるような姿が印象的な人など様々でした。
ピアニストのコンサートでも、それはまったく異なることもありますし、ちがうジャンル同士の公演に似た空気を感じることもありました。
小山さんの場合は、包み込むような、それでいて触れられないような空気感を感じさせられました。
序盤は緩やかで聞かせる演奏の時はその空気感そのもので、激しい演奏になっても、どこか、その空気を保ったままでふわりとした優雅な演奏を楽しめました。
演奏している姿が絵になるというか、映画のシーンを思わせるような、そのような空間の中で紡ぎ出せれる音が聞こえてるイメージをもちました。
また、いつの瞬間にも音楽やピアノに対する深い愛情のようなものが感じられ、卓越した技術をもちながら、それを見せつけようという素振りを微塵も感じませんでした。
多くの音楽家は激しい演奏や曲の山場になると、モードが変わったり、スイッチを入れるような印象があり、それも当然の話なのですが、小山さんの場合は静かに燃えるような、言うなれば、赤い炎ではなく青い炎のようなそのような印象を受けました。
ショパンを中心に、あまりクラシック音楽に詳しくない自分でも知っている名前や曲が多いところも良く、MCは全くなく、アンコールでの曲名をか細い声で言うのみ、一方で何も語らずとも、自分の世界をつくり、柔和で優しさが感じられ笑顔で客に向き合うなどさすがだと感じました。
キャリアや実績、才能だけでなくこのような面でもやはり本物はちがうと思いました。(後略)
(20代男性モニター、1階席前方で鑑賞)

 

2/3小山実稚恵ピアノリサイタルの公演情報は、こちら